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ブログ/2018-06-11

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実験と料理は似ている 

               
Cookbookは料理本であるが,俗語では化学実験用の分析マニュアルという意味もあるという.

 大学院に入って以来,定年で退職するまで40年近く土壌物理実験が出来る職場で過ごしてきた.最初の頃の実験は先輩や教員の指導および試験法の本を参照に人まねを実践した.これは,実験を上達させるための常套手段である.実験のやり方に慣れてくると,今度は手抜きをすることを考え始めた.手抜きをしながら精度良く測定するにはどうしたらよいかということである.測定法の本は初めての人が試験を出来るように,そして大半の人に満足してもらえるように書かれている.したがって,試験に慣れてくると無視して良い項目が見つかる.例えば,水には粘性があるので,透水係数は決まった温度に補正して表示するというのは不攪乱土の透水係数を測っている者にとってはナンセンスである.一方ではピクノメータを用いて土粒子密度を測定する際には,水温を精度良く測定することが必須であり,室温と平衡した脱気水を使うといった状況判断が加わっている.また,コアサンプラで乾燥密度水分特性曲線を求める場合と,透水や通気を測定する場合とでは採土に掛ける時間は相当違うし,目的が飽和を含めるのか不飽和が対象なのかでも採土への気の使い方は随分異なる.手抜きがある一方で,結果の再現性を重視するために非常に慎重になる.

 実験の上手な人のこのような感覚は,料理が上手な人にもいえそうだ.実験も料理も次のステップがきちんと頭に入っている人は手際よい.調味料を加える場合,私はレシピ通りの容量または質量を加える.そのため,バランスを愛用している.大さじ1杯の水は15gであり,醬油は18gなので,重さから容積へ変換する表も不可欠である.慣れた人は,過去の様々な味を感覚として記憶しているのだろう.調味料の順番や加える量をみていると,味見もほとんどせずに次々と進み,たまに味見をする程度である.

 投稿論文には通り一辺倒の実験手法しか書いていないが,実際に追試をする,自分のものにするとなると,ひと工夫が必要なこともある.実験のコツは,料理の隠し味ですばらしい食べ物が出来上がるのに似ている.
 結婚してからは女房がもっぱら料理を作り,弁当も30年以上にわたって作り続けてくれた.その結果,女房は料理がうまくなり,自分は実験が上手になった.さて,退職と同時に自分は実験とも終止符を打ったが,女房は相変わらず食事を作り続けている.実験をやりたいという気は毛頭無いのであるが,何となく不利な気がする.料理を上手に作る女房の方が格上のような気持ちがする.亭主は女房がいないと困るが,女房は亭主がいなくても一向に困らない.

 男だって若いときから料理を作ることが好きな人はいる.それは否定しないが,今の自分にどうして何も作れないのかと問い詰められても返答の仕様がない.しかし,夕飯に何を食べたいか聞かれ,それを一所懸命作っている女房の傍らで,酒を飲んでいるようでは誰が見ても不公平だと言う.女房が料理をしているとき亭主は静かにしていれば良いという問題でもないのですが,困ったことです(H).

・・・・ 過去のブログ記事・・・・

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