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熱伝導率(1) 非定常法

熱伝導率(1) 非定常法

土の熱伝導率を測る (1) 非定常熱伝導率測定法(ヒートプローブ法)

熱伝導率の特徴

土中の熱輸送は大部分が熱伝導で行われ、対流や放射はほとんどない。このため、土の熱伝導率は基本的な熱物理量である。なお、減圧という特殊な条件下では、潜熱輸送(+対流)が卓越する。熱伝導率の温度依存性も、対流現象によっている。これらについては定常熱伝導率測定法の項で説明する予定である。

 土の熱伝導率(λ)は、固相の熱伝導率と三相分布、温度により変化する。同じ土では水分が多くなるにしたがいλは大きくなる。測定温度にも依存する。このため、正確な測定は温度を規定する必要がある。土の熱伝導はふつう大きくても液状水の熱伝導率(0.6W/(m K))の2-3倍、小さい場合はこれ以下で、水のそれの10分の1程度までである。

(「土の熱伝導率」には、対流による熱輸送分が含まれる場合がある。これは正確には、「熱伝導率」ではない。上記のように熱伝導率の温度依存性は、対流現象によっている。しかし、熱伝導率測定法では、伝導部分と対流部分とを分けることができない。「見かけの熱伝導率(apparent thermal conductivity)」というべきものである。)

土壌の熱伝導率の測定
 熱伝導率の測定法には定常法と非定常法とがある。このうち、一定の温度勾配を長時間試料に与える定常法は、土壌の場合、水や空気の移動を引き起こし、その結果、土壌の流体の不均一な分布をもたらす場合(低水分状態)がある。

そのため土壌の熱伝導率は普通、短時間にわずかの熱量を試料に与えるだけで測定できる非定常法の一種であるヒートプローブ法で測定する

なお、定常熱伝導率測定法は、装置の製作に工夫が必要である。この装置製作法および測定法については別項で説明する。

ヒートプローブ法は無限大の試料中に入れた線熱源から一定時間に一定の発熱があるとき、線熱源の周囲の熱伝導率が大きい場合は線熱源自身の温度上昇が小さく、逆に周囲の熱伝導率が小さい場合には線熱源の温度上昇が大きくなることを利用したものである。

ヒートプローブ法
 実際のヒートプローブは針状円筒形の細長いスレンレス・チューブの中に、ヒータ線とプローブ自身の温度を測定する温度センサーとを樹脂で固定したもので、直径は1mm前後、長さは50mm程度以上で、長さは状況に応じて使い分ける(写真、Fig.1)。発熱量をできるだけ小さくすることで、周囲への影響を押さえることができる。

画像の説明

このヒートプローブ法を比較法で用いる双子型ヒートプローブ法によると精度はさらに向上する。

 試料中のヒートプローブの発熱時の温度変化は次式で表わされる。

 T-T0 = q/4πλ(d+ln(t+t0))
ここで、qはプローブの発熱量、λは試料の熱伝導率、dは定数、tは時間、t0は補正値、 Tは時間tにおけるプローブの温度、Tはt=0におけるプローブ温度である。

 発熱停止後の温度変化は同様に次式で表わされる。

 T-T = q/4πλ(d+ln(t+t0))-q/4πλ(d+ln(t-t1+t0))
ここで、t1は発熱停止時間である。

 時間に対する温度変化を下図に示す。

温度変化

比較法による測定(双子型ヒートプローブ法)
 これらの式により、T、t、qが分かればλは求められる。しかし、実際には理想的な線熱源は得られないので、誤差が生じることになる。誤差を小さくする方法の1つとして比較法による測定がある。

 λが既知の試料中にヒートプローブを入れたときの時間と温度との関係を先に求め、次にλが未知の試料中における時間と温度との関係を求める。この場合、プローブからの発熱量、発熱時間および測定時間を両者で全く同じにすることが条件である。両者の温度変化を各辺ごとに除せば、温度変化の比が熱伝導率の逆比になる。

 (Ta-Ta0)/(T-Tb0) = λ/λa
ここで、添え字a,bはそれぞれ、熱伝導率が既知よび未知の物質を、0はt=0の時を示す。

  λb = λa*(Ta-Ta0)/(T-Tb0)

 これより温度変化の比から容易に熱伝導率が求められる。温度降下の場合も全く同じになる。実際の測定では、温度上昇および降下の両者を測定し、得られた結果を平均して、試料の熱伝導率とする。

 発熱量はふつう、プローブ1cmあたり30mW程度、温度上昇は1K程度、時間は上昇および下降を合わせて5分程度でよい。

 基準物質としては、寒天(1%程度)またはカルボキシ・メチルセルロースの3%溶液などが便利である。いずれも水の熱伝導率を適用する。

 これらは簡単なプログラムを組んで自動化できる。
 表計算ソフトを用いてもよい。

双子型ヒートプローブ法による測定操作

1)最初に各種設定を行う
  ・試料温度 
    恒温箱に試料を入れるなど試料の測定温度はきちんと管理する。
    ヒートプローブの基準温度(熱電対の冷接点)は恒温箱の温度と同じにする。温度が常温    近辺以下であれば、蒸発しないように密栓した瓶に入れた水を基準に用い、高温の場合は    金属のブロックに小孔を開け、このなかに熱電対の冷接点を入れ、樹脂などで充てんして    基準とする。
 
  ・ヒータ電圧(プローブの発熱量)
     V = SQRT(W L R)
    ヒータの全抵抗をR、プローブの長さをL cm、発熱量W/cm

    (例:ヒータ抵抗が10Ω、プローブ長さ5㎝、発熱量30mW/cmの場合のヒータへの電圧は
     V = SQRT(0.03*5*10) = 1.225(V) となる。

    電源電圧は可変定電圧電源を用い、電圧はデジボルで有効数字4ケタまで測定しておく。  
  ・測定時間
    加熱および冷却時間は同じにする。
    サンプリングデータはそれぞれ50点あればよい。
    (加熱時間、冷却時間をそれぞれ2.5分とすると、サンプリング間隔は3秒となる。)

  ・プリアンプのFS
    プリアンプを使う場合、FSを設定する。

注意:いったんヒータ電源電圧、測定時間、サンプリング間隔を設定したら、基準物質および試料の全測定を通じて、これらを変更しない。

プリアンプのFSについては変更可能。ただし、計測後にスケールを合わせる処理が必要である。これは、発熱量30 ~ 40mW/cmの場合、水分の少ないサンプルなどではプローブの温度上昇が5℃以上になり、スケールアウトすることがあるからである。

2)測定経過と熱伝導率の計算
  ・ヒータ電源ONとOFFの状態で基準試料、被測定試料について温度変化を測定する。いずれも   ロガーやPCのメモリーに記録する。
   とくに、基準試料については慎重に行い、繰り返し測定し、精度を確認しておく。確認する   方法は、繰り返し測定したデータを被測定試料とみなして、勾配およびrを調べる。勾配が   1.0とrとが1.0に近いほど、精度の高い基準データとなる。
   あるいは、基準試料について繰り返し測定を行ったデータを、表計算ソフトなどを用いて、   平均化し、基準データとしてもよい。

  ・基準試料の温度変化を縦軸(Y軸)、被測定試料の温度変化を横軸(X軸)にとると、下図の    ようになる。

双子型ヒートプローブ

 線形になった部分のタンジェント(tan)は昇温部分(tan 1)と下降部分(tan 2)の2つが得られる、原理的には両者は同じ値を取るが、実際は異なる場合が多い。その場合は、両者の単純平均を行う。得られた平均値に基準試料の熱伝導率を乗じて、被測定試料の熱伝導率とする。

 勾配(tan)を自動計算する場合には、昇温開始および下降開始より15秒間程度のデータは(3秒間隔で5個)使用しない。こうすることで、直線の相関係数(r)は0.99以上となる。相関係数(r)が0.99以下になる場合は、原因を調べて、相関係数(r)が0.99以上になるよう対処する。双子型ヒートプローブ法で最も注意すべき点の1つである。

 試料の温度が異なる場合、ヒートプローブの温度測定に熱電対を用いると、温度の項で説明したように、1℃当たりの熱起電力が異なる場合がある。これを考慮に入れないと、大きな誤差が生じる。

 具体的な対応方法は、熱起電力を[温度―熱起電力]データから多項近似し、その微分値から各温度における熱起電力を計算して補正する。

センサーの製作
センサーの大きさは測定する対象の大きさによって変える。
私たちは、基本は5㎝の長さを用いたが、20㎝や5m、10mのセンサーも製作し測定した。

これら装置の製作方法は別項で解説する。

参考文献
Kasubuchi, T.:Twin transient-state cylindrical-probe method for the determination of the thermal conductivity of soil. Soil Science,124, 255-258(1977)
Kasubuchi, T. & Hasegawa, S.:Measurement of spatial average of the soil water content by the long heat probe method. Soil Science and Plant Nutrition,40, 565-571(1994)

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