土の水分を一定にする
土の水分を一定にする
マトリックポテンシャルを用いて水分を調整する方法
少量の土を使う場合には,吸引法,加圧板法,蒸気圧法によって平衡した土を使うことが出来る。この方法は充填土でも不撹乱土でも使え,ポテンシャルで水分を調整しているのが特徴である。そのため,大量の土をこのような方法で集めることは容易ではない。具体的には水分特性曲線の項を参照のこと。
土を乾燥させるか土に水を加えることにより水分を調整する方法
水分調整を行った細土(2 mmもしくは0.84 mm以下)を実験に使う場合を対象とする。
生土を乾燥させて水分調整する場合は,生土の含水比(ω1)をあらかじめ求めておく。乾燥させる生土は,質量(W1)を測定した後に室内や屋外の日陰に広げる。
生土の含水比を目標とする含水比(ω0)にするためには,土の質量(W0)が
W1 (1+ω0) /(1+ω1)
となった時点で土を取り込み,指でほぐしながら2 mm (または0.84 mm)の篩を通過させる。篩を通過させた土はポリ袋に入れて密封し,1日以上経過してから含水比を測定し,目標とする含水比(ω0)との差からそのまま実験に使えるかどうかを判断する。
普通の実験では含水比の差を1%以内にする必要はないし,2~3%の違いならば許容できるだろう。生土を乾燥させるとき,土は薄く広げると乾燥が早い。また,大きな土塊が含まれると土塊の表面は乾燥,内部は湿潤ということが起こるので,10mm以上の土塊は潰すことにより数mm以下にする。
乾いた土に水を加えて水分調整をする場合も乾いた細土の含水比(ω2)と湿らせたい土の質量(W2)をあらかじめ求めておき,目標とする含水比(ω0)になるまでに加える水の質量(Ww)を によって求め,乾いた土の上に少量(霧吹きの容器中にWwの水を入れておくのも良い)加えたら,均一に混ざるように土をかき回すという作業を繰り返す。一度に入れる水量が多いと,土が団子状になってしまい水分を均一化するのに余計な時間がかかる。また,多水分になると団子状になるのが避けられないので,団子状になり始める状態が水分調整の上限となる。
植物培地の水分状態を一定にする方法
植物の生育が土壌水分の多寡により影響を受けるため,多水分や少水分の培地を作り,植物生育を調べようとする試みが昔から行われてきた。直感的には培地の高さが10 cm程度で土の透水係数が10-6 cm s-1よりも大きければ吸水にともなう水分減少を透水性の良い素焼板やフィルターメンブレンを介して供給出来そうである。したがって,黒ボク土では-10 kPaよりもマトリックポテンシャル大きければ土壌水分量(気相率)を一定に出来る可能性があるが,その他の土では飽和近傍の水分状態を除くと,水分量一定の培地を作ることは出来ない。土壌水分制御が難しいのは,根の吸水速度(これに土壌面蒸発が加わることもある)に合わせて培地に水を供給すること,すなわち動的な平衡を保つことが出来ないことによる。そのため,土壌水分と植物生育の厳密な対応をとることは難しく,初期土壌水分を変えた試験や,土壌水分領域を湿潤側,乾燥側といった領域を変えた実験が行われることになる。植物培地の土壌水分制御ついての問題点はKramerによって解説されている。Kramer,P.J著,田崎忠良監修,水環境と植物 第4章,養賢堂 1986年
電子レンジを用いて水分を一定にする方法
電子レンジを用いて水分を一定にする方法がHortonら(Horton, R., P.J. Wierenga, and D.R. Nielsen(1982): A rapid technique for obtaining uniform water content distributions in unsaturated soil columns.Soil Science.133:397-399)によって提案されている。
これは、水分が遍在するサンプル内の水分を均一にするために利用できる。ただし、水分が少なく乾燥状態に近い場合はこの方法では均一にならない。