乾燥密度
乾燥密度
乾燥密度
乾燥密度の測定では野外で採土缶(採土円筒)により土を採取し,成形することが主な作業であり,その後は,採取時および乾燥後の質量を測ることである。
a. 採土
野外で不撹乱土を採取するときに使う採土缶は,我が国では底面積が20 cm2,高さが5.1 cmの100 cm3の金属円筒がよく使われるが,ガス拡散係数や不飽和透水係数用の円筒では断面積が100 cm2,高さが5.0 cmの500 cm3の円筒も用いられる。最初に100 cm3缶の採土法について説明する。
不撹乱土の採取で大切なことは,円筒を土壌面に鉛直に入れること,打設により円筒内の土が崩れたり亀裂が入ることを避けること,土を圧縮しないように採取することである。なお,円筒の下端はテーパー状になっていることが前提である。
長さ約2 m,下端の直径が数センチの丸太(足場材,園芸屋にある木立を支える丸太など)を使う。丸太の表面のささくれはヤスリで除くか表面を焼いて除去する。円筒と丸太の間にはカラー(採土補助具)(図1)を挟む。
円筒を置く土の表面は極力平らにし,丸太は鉛直に一気に押し込むようにするが,カラーの上面まで土中に押し込んではならない。土が硬い場合は2~3人で押し込むと良い。採土深が1 m程度までならば,地上にいる仲間に丸太を押し込んでもらうとよい。円筒を土中に入れ終わったら,周囲の土を取り除き,円筒の下に移植ごてを入れて円筒を取り出す。円筒を隣接して複数入れた場合には剣先で取りだしても良い。
丸太を使って採土することは経験上最も優れているが,学内ならまだしも遠くへ土を採取しに行くときには丸太が邪魔であるという意見が聞こえそうである。丸太は邪魔だがスキー板は邪魔でないというのもおかしな話ではあるが,もう少し扱いやすい道具を紹介しておく。
この採土補助具はカラーと木製の丸棒の2つに別れる。カラー部分はポンチ絵(図2)に見るように,土が採土缶の上端に達すると押さえ板を押すことで2本の金属棒を持ち上げるようになっており,カラーの押し込み(打ち込み)を止めるタイミングがわかる。丸棒はカラーにはめ込むようになっており木製であるので,叩く場合は木槌を使う。上端は木が裂けないように鉄輪をはめてある。土の採取面に鉛直に円筒を挿入するには丸棒の長さは長いほどよい。ただし,木製の場合は長くしすぎると折れる心配があるので,採土する場合には気を付ける。金属のパイプが適当かも知れない。
以上2つの採土補助具は100 cm3円筒を対象としたが,円筒の直径が異なる場合には円筒に合わせたカラーを作る。断面が100cm2の場合には,写真1のようにカラーにはめる蓋を作り,蓋の上に3寸5分,長さ1尺程度(断面が10.5 cm四方,長さが約30 cm)の角材を立て,角材をカケヤで叩く。角材を保持する人とカケヤで叩く人の2人が必要である。叩く回数が少ない方が土の圧縮が少なく採土が出来る。土の成形には時間がかかるので,現場では土がはみ出したままで円筒全体をポリ袋等でくるみ,土が欠け落ちないように工夫して実験室に持ち帰って成形する。
b. 成形
野外では常に晴れて暖かく気持ちが良いとは限らない。雨が降り始めたり,雪が残っていたりで寒い日もある。また,土壌調査と採土に思いの外手間取り時間が窮屈になることもある。したがって,現場では綺麗に成形せずに,実験室まで運搬する間に土が採土缶から抜けたり崩れたりしない程度の成形にとどめた方が良い場合の方が多い。
100 cm3円筒で土を採取したときは,円筒の上下にはみ出した土はカッターナイフを用いて写真2のように成形する。カッターナイフは,刃渡りが5cm以上有り,刃が鋭利であるので成形には一番適しているようである。ただし,手を切らないように十分に気をつけること(サンプリングには化膿止めの塗り薬とサビオを必ず持っていくようにする)。
カッターナイフで根が切れないときはハサミで切る。小石が飛び出しているときは,丁寧に取り除き成形時に捨てた土で埋める。乾燥密度や水分特性曲線用の不撹乱土はこのようにして成形するが,透水や通気を測定する不撹乱土では,成形時に土を練り返すことが空気や水の移動に大きく影響するため,穴は残して置いて構わない。
移動現象の測定用の成形については不飽和透水係数の項で説明する。悩むのは1つの試料で乾燥密度と透水係数を測定するときである。試験の目的を考えてどのように成形するか決めざるを得ない。成形し終わった円筒は蓋をし,蒸発を防ぐためにビニールテープで軽く留める。ビニールテープは蓋と円筒を固定するためであり,気密にするためではない。土は生ものなので研究室に持ち帰ったあとはできるだけ早く試験に供する。