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論文を書こう

論文を書こう

論文によって個人や組織を評価するという傾向が一段と強まっている。論文数だけでなく、インパクト・ファクター、サイテーション・インデックスなど評価方法も進化してきている。これらに関する記事が一般新聞にさえ登場するまでになった。論文によって評価され、その評価に基づいて研究費の多少だけでなく、個人の評価や組織の在り方まで規定される。当然、論文を書くことが目的化する。しかし、だから私は"論文を書こう"と言うのではない。

論文は評価されることを目的として書くのではない。論文の目的は、研究の記録であり、研究して得た新しい知見を伝え、読者と共有することにある。その論文の本質は評価することにある。取り上げた課題の重要性、位置づけ、新たに見いだした内容、残された課題など、論文を構成するのに不可欠な内容は、すべて著者の評価した結果である。自ら評価することが論文の本質なのである。

では、どうしたら評価できるようになるのか。私の友人は、「論文を書くことは、学ぶことなんだ」と話してくれたことがある。評価するには、基準が必要である。たとえば、課題に対する評価。なぜ、いまこの課題を取り上げるのか、その歴史的、科学的、社会的な様々な側面からの評価がなければならない。評価するという行為は、それに対する評価基準を持たなくてはできない。その評価基準は何によって得るのか? それは、学習である。最初から、評価基準を十分に持ち合わせている人などいない。その評価基準を、自ら論文を書くことで鍛えるのである。論文を書くことは、間違いなく、学ぶことである。学びつつ、書く。一見、確立された評価基準に基づく結果のように見える論文づくりの内実は、書き手の評価基準の確立過程でもある。大学院生に投稿論文を書くトレーニングをしている。当の本人から、「論文を書いてから他の方の論文に、これまで見えなかったものが見えてきました」と聞くと、書くことで他人の論文を見る目も深まったことが感じられてうれしい。

土壌物理学に関する論文を発表する場は少なくない。そのなかで、学会誌「土壌の物理性」は何を目指せばいいのだろうか。もちろん、それは、学会を構成する一人ひとりにかかっているのだが、私は、「土壌の物理性」は、新しい知見の発表の場であるとともに、土壌物理学に関するよりしっかりした評価基準を、お互いが鍛え、共有できるようになる場、いわば学習する場でもあってほしいと思っている。(K)
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雑誌「土壌の物理性」巻頭言 90, 1-1(2002) 

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