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土を詰める

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   目  次

1.土を詰める目的
2.何に詰めるか?
3.試料の前準備
4.試料の水分調整
5.乾燥密度の計画準備
6.土の詰め方
7.特殊な土の詰め方

 

1.土を詰める目的
 実験を行うためには、準備した容器に収まるような形状の土を用意する必要がある。その場合、現場の土を乱さずに容器に収めたものを「不攪乱試料」、現場から採取した土をばらして容器に詰めなおしたものを「攪乱試料」と呼ぶ。土を詰める目的は、後者の「攪乱試料」を作成するためである。

 

2.何に詰めるか?
 実験目的で最も多く用いられる容器は、円筒容器と呼ばれるもので、外部から内部を観察できるためには透明アクリル製の円筒容器、特に視覚的な観察を必要としない場合は塩ビ製の円筒容器を用いるとよい。円筒容器の内径は、細いもので5cm、太いもので10cmから30cmぐらいまでが使用され、それ以上の容器は大型容器として特別な設計を必要とする。容器壁面厚さは5mm程度が標準であるが、大型円筒容器では、変形や破壊を防ぐため、より厚い壁面を要する。
 実験後に土の深さ別試料を採取する必要がある場合、円筒容器を破壊することはリスクが大きいので、あらかじめ輪切り円筒を用意して繋げるとよい。例えば、高さ2cm、内径10cmのアクリル容器を10個用意し、これを繋げて高さ1mの円筒容器を作成する。この中に土を詰め、実験終了後に上から順に2cm毎に土を輪切りにして別に用意したアルミ皿に移し替えると、その試料に関するデータを得ることができる。
 輪切り円筒を使用する場合、各円筒の接続に注意が必要となる。実験によく使われる真空用グリースを各輪切り円筒の切断面に薄く塗り、相互に密着させて周りをビニールテープで巻くと、空気や水の漏れを防ぐことができる。ビニールテープを巻きつける際は、テープを強く引っ張らず、できるだけ元の形状と張力を保ったままテープを巻きつけるとよい。
 円筒容器のことを、研究者はカラムと呼び、これを用いた実験をカラム実験と呼ぶ習わしがある。ここでも、円筒容器のことをカラムと書き表す。

 画像の説明
     図 輪切り円筒を重ねて作成したカラムの例

 

3.試料の前準備
 現場から採取した土の試料をカラムに詰めるためには、適度な水分状態に調整することが必要である。水分が多すぎる土はべたべたして充てん作業に向かないので、ビニールシートやプラスチックバットなどに広げて乾燥させる。室内環境で数日間乾燥させた土の試料を風乾土と呼ぶ。逆に、現場の土が乾燥しすぎているときは、適度な水分を与える必要が生じる。これも、ビニールシートやプラスチックバットなどに広げ、霧吹きスプレーのような道具で水分を与え、その水分が均一になるよう、撹拌して静置する。この他、採取した土をビニール袋に入れたまま、よくもみほぐして全体が均一な水分状態になるように数日間以上放置する前準備を行うこともある。

 

4.試料の水分調整
 前準備を行った土をそのままカラムに充てんすることもあるが、多くの実験では、初期水分量を指定している。初期水分量を所定の値にするためには、水分調整が欠かせない。まず、対象とする土の現在の含水比測定する。この場合、試料全体は空気をできるだけ追い出したビニール袋に保管し、しばらくは水分状態が変化しないようにしておく必要がある。現在の含水比の値を確定したのち、目標とする含水比の値と比較し、水分が少なければ水分供給、水分が多すぎれば乾燥させる必要がある。

 画像の説明

(例題)いま、含水比が50%で全質量1.5㎏の土試料があるとする。この土を用い、含水比60%のカラム試料を作成したいとき、どのような水分調整をすればよいか?
(答)含水比ωの定義は、土の固相質量Ms、水質量Mwを用いれば
        ω= Mw/Ms
であるから、
        0.5= Mw/Ms
また、Ms+Mw=1500gより、Ms=1000g、Mw=500gである。この土を含水比60%にしたいとき、追加する水分X gは、
        0.6= (Mw+X)/Ms =(500+X)/1000
より、X=100gである。すなわち、100gの水を用意してこの試料に加え、充分にかき混ぜて、加えた水が均一に行き渡るようにすればよい。

 

5.乾燥密度の計画準備
 土をカラムに詰めるとき、どのような密度で詰めるかは、実験目的によって異なる。例えば、砂を最密充填したい、という目的を持つ場合、水中充填や振動充填など、実験中に体積が減少しないような充てん法が採用される。
 これに対し、自然状態に近い密度で土を詰める必要があるときは、所定の体積に対し、所定の土試料を均一に充てんする必要に迫られる。しかも、水分状態も指定した値としなければならない場合、事前の計測と計算が不可欠である。土の乾燥密度ρdの定義は
           ρd=Ms/V ρw
である。ここに、Msは土の固相部分の質量、Vは土の全体積、ρwは水の密度である。土中の水移動や物質移動を扱うカラム実験では、乾燥密度ρdの値を採土地点の自然状態と等しい状態を再現することは、特に重要である。そのため以下の手順が要求される。
①採土現場の土の乾燥密度測定する
②カラムに土を詰める直前に、土の含水比測定する
③その含水比の値をもとにして、所定の乾燥密度とするために必要な土の量を計算する。
④カラム内に、所定の乾燥密度で均一な状態になるように土を充てんする。

(例題)現場の土の乾燥密度は0.67 g/cm3であった。また、測定前の土の含水比は85%であった。この土を自然状態の乾燥密度と同じ値になるように、内径10cm、長さ60cmの円柱型カラムに詰めるには、どのように作業したらよいか?
(答)まず、カラムの体積を計算し、4712cm3を求める。これに乾燥密度をかけて、土の固相部分の質量Ms=3157gを求める。含水比の定義式を用い、固相質量Ms=3157g、含水比ω=0.85より、水の質量Mw=3157×0.85=2683gも求める。そしてカラムに充てんすべき試料の全質量をMs+Mw=5840gと定める。すなわち、カラムに必要な試料は5.84kgである。これを均一に詰める方法は、次項に述べる。

 

6.土の詰め方
 土をカラムに均一に詰めることは、意外と難しい。例えば、所定の体積内に必要量の土を一気に投入し、上からギューギュー―押し付けたとする。強い力で押せば、予定内の体積に土を押し込むことはできるが、強く押した面に近いほど密度が高く、下の方ほど密度が低くなってしまう。これは、カラム壁面の摩擦作用などが働き、また土粒子同士の相互作用も不均一なので、パスカルの原理が働く水のような均一圧力が行き渡らないためである。
そこで、土を少量ずつ小分けし、それぞれの区分の中で均一な充てんを行い、次の区分も同様に繰り返して全体カラムを作成することが推奨される。その場合、小分けして充てんするので、充てんと充てんの間で境界面が形成されることが避けられない。そこで、毎回の充てん時に、前の充てん面を細い棒などで軽く攪乱し、次の充てん土とのなじみをよくするような工夫が望まれる。これを怠ると、充てん毎の明瞭な境界面が形成されてしまい、実験上の支障をきたすことが危惧される。

画像の説明

 土の充てんは、手の指ではなく、先端が平面を持つような棒状の物質を用いるとよい。あまり細いと圧力が集中しすぎるので、適度な面積を持たせたい。直径2cm程度の円盤状の先端を持つ棒でもよい。土を詰めるときは、カラム壁面の摩擦を考慮し、中央付近より壁面近傍の方をより多く押すと、均一性が得られる。

 

7.特殊な土の詰め方
 砂や粘土など、極端な性質を持つ土の充てんは、更に工夫を要する。
乾燥した砂の場合は、どのように充てんしても砂粒子の再配列が起きやすく、特に透水実験などを行うと、水の浸入と同時に体積収縮を起こすことが多い。砂を適度に湿らせてから強く押して充てんするか、水を張った中に砂試料を落下させて水中充填を行うなど、実験目的に応じた詰め方を採用する。
 粘土は、攪乱試料を充てんするという作業になじまないので、むしろその形状を維持したままで、不攪乱試料を実験室に輸送して研究に供する方が適切であろう。ただし、モンモリロナイトやカオリナイトなど、市販の粘土鉱物を実験に供する場合は、粉末状の試料をカラムに詰めるので、それほどの困難は生じない。
 湿原の土、すなわち泥炭土の場合は、繊維が絡まっていることを考慮すると、攪乱土を充てんするという作業は考えられない。最初から不攪乱試料を採取することを計画すべきだろう。

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