土壌への雨水浸透
土壌への雨水浸透
環境地水読本 土壌への雨水浸透 宮﨑 毅 著、東銀座出版社
122ページ、2000円(税込)、2014年11月発行
千葉県在住の宮澤博氏は、長年、住宅地の開発・販売に携わる中で、雨水浸透貯留の重要性に気づき、住宅地においても土壌浸透、地下浸透のメリットを生かすべきであることを訴えてきました。しかし、土壌特性によりその設計や施工計画が異なるのではないか、との問題意識を持ち続けておられました。そのような折に、ふとしたきっかけで「環境地水学」という学術分野に出会い、「これだ!これが求めていた知識だ!」と思い立ち、ついに「環境地水技術研究会(代表:宮澤博氏)」を設立されました。
この研究会は、環境地水学の知識を応用すればより良い技術となるのではないか、といった構想のもとに、その活動を開始しました。関連技術としては、都市や農村での雨水浸透貯留、舗装道路のファーストフラッシュの適正処理、公園や学校校庭における雨水浸透・排水機能の強化、などがあります。
特に重視したのは、国内各地域で開催する研修会です。関心を寄せる地方行政担当者、関連民間企業、コンサルタント、個人、などに呼びかけて研修会を開催し、従来とは異なる技術としての環境地水技術の普及を目指しました。その研修会で使用されるべきテキストとして、本著書が出版されました。
本書の内容は、雨水がどのように土壌へ浸透するか?という原理的な問題を解きほぐし、それでは土壌の透水性をどう測定・評価すれば良いか、といった実用知識につなげるものです。なぜ、ディスクパーミアメーターという測定手法が推奨されるのか、本書から読み取っていただきたいのです。
このテキストは「理論があるからまずこれを理解しなさい」といった天下り的な記述を避け、「なぜその説明を理解する必要があるのか?」という根源的な問いに答えるように、また、研修会に参加しなくても、独学で全体が読み切れるような、平易な文章で書かれています。
折しも2014年3月27日の衆院本会議において、水循環基本法が全員一致で可決され、7月1日に施行されました。この法律の中でも土壌浸透の重要性が記載されています。この機会に、土壌への雨水浸透という課題へ立ち向かう一助として、本書の一読をお勧めします。(M)