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水分特性曲線

水分特性曲線

水分特性曲線
 水分特性曲線(pF水分曲線)は土壌物理実験の中で最もよく測定される項目の1つである。測定原理は実験書の中に書かれているが,実際の測定では案外と測定者の判断に任されている。ここでは,マトリックポテンシャルがおおよそ-10 kPaまでの吸引法と-100 kPaまでの加圧板法について解説する。基本的に,野外で採土缶に採取した不撹乱土を用いて毛管飽和からの脱水過程を対象にする。

吸引法

a. 装置の概要
 測定に使用する装置は直径297 mmのバーサポアを使ったメンブレン吸引法である写真3上。直径が大きいので,100 cm3の採土缶ならば18個同時に処理できる。装置はアクリル製である。飽和および吸引圧の設定は,排水口の位置を調節することにより行う。そのため,写真3下のように,装置を棚の上に置き,排水口を任意に設定できるような工夫をすると良い。

画像の説明

 

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b. 測定法
 試験準備は装置の飽和から始める。脱気水を張った洗面器(直径は約40cm)にメンブレンに気泡が閉じこめられないように片面を静かに浸し飽和させる。

次に実験台の上でメンブレンを支持枠の上に置きドーナツ板を載せて,対角線のネジを1組として締める。材質がアクリルであるために必ずネジにあったスパナを用いて軽く締め付ける。ねじ山を潰す危険性が高いので,モンキースパナは使わない。

次いで,装置全体を逆さにして洗面器の中に漬け,排水口に50 mlのシリンジをはめて装置内部に残っている空気を出来るだけ抜く(口で吸っても良い)。空気は完全には抜けないので,ビニールチューブ内が水で満たされたら排水口を下げてサイホンの原理で残った空気を抜き排水口を閉める。

次に,装置を所定の場所に置き排水瓶の水面をメンブレンより若干下げ,排水チューブの先は排水瓶の水中に入れておく。これで,装置の準備は終わりである。

多くの場合,採土缶で採取した土は成形されて金属円筒の高さと同じになっているはずである。そのため,このままメンブレンに載せても土とメンブレンとの接触が悪く,脱水がうまく行われない。そこで,図3のように円筒の内径よりも1 mm小さな円盤(厚手のボール紙で直径49 mmの円盤を作り,クレラップで覆うと良い)で上面の土を押し,下面から0.5 mm程度出すようにする。

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試料を毛管飽和する前に,円筒全体の質量を測定する。サンプリング時に採取した撹乱土,または成形時に出た土を用いて含水比を求めるようにしておくことが大切である。

土を毛管飽和するときは,排水瓶の水面の位置をメンブレンと同じ高さにする。この飽和の方法では,例えば100 cm3缶を用いたときは,試料上面のマトリックポテンシャルは-5.1 cmであり,毛管飽和しているときもあるが,試料上面にある0.6 mmより大きな粗孔隙には水で満ちていない。このような認識を持っていることは大変大切なことである。円筒をメンブレンの上に載せ終えたら必ず蓋をする。毛管飽和中にメンブレンと土の表面から蒸発水量はばかにならないことがある。毛管飽和中は,排水瓶の水面がメンブレンと同じ高さになるように時々調整する。試料上面の土が光るようになったら毛管飽和は終わったと見なす。試料によっては2~3日待っても水が試料上端に達したかどうか分からないことがある。そこで,1日以上かかる場合は,排水瓶の水面が低下し続けているか,または試料の質量が増加しているかを時々チェックすることにより,試験を開始するかどうかを決める。毛管飽和が不十分なときには,例えば吸引圧を10 cmにした時に土から脱水されるのではなく依然として吸水が生じることもある。したがって,大切なことは,水分特性曲線を求める目的である。

毛管飽和が終了したら質量を測定する。土によっては飽和することにより採土缶との接触が不良となって土が落ちてしまう場合もある。このときは,装置全体を傾けて土が落ちないようにして取り出す。またそれも無理なときは,毛管飽和の質量測定は止める。

質量測定の終わった円筒は再びメンブレンの上に載せ,吸引圧をh cmにし,脱水させる。吸引圧をh cmにするには,排水瓶の位置を下げ,試料中心と排水瓶の水面との距離がh cmとなるようにする。毛管飽和の時の位置の基準と異なるが気にする必要はない。もちろんメンブレンと排水瓶の水面との距離がh cmとなるようにしても良い。脱水が行われている間は排水瓶の水位が上がるので,時々距離がh cmになるように瓶の位置を下げる。脱水が終了すると排水瓶の水面が動かなくなる。そこで,排水チューブをピンチコックで閉じ,円筒試料の質量を測定する。目的とする吸引圧でこの作業を繰り返し,最後の吸引圧で質量測定をした後,円筒ごと乾燥機に入れて乾燥質量を測定する

試験終了後は装置を再び飽和させ,メンブレンに残った泥を洗浄瓶で落とした後,ネジをはずし,メンブレンを乾いた雑巾の上にのせて乾燥させると良い。メンブレンは高価な消耗品であるので,大切に扱って繰り返して使う。また,メンブレンを外した装置は組み立てておくことでネジやワッシャの散逸を防ぐ。

参考
長谷川周一:メンブレン吸引法,土壌の物理性,77:51­52 (1998)
バーサポアは日本ポール株式会社 www.pall.jp/

加圧板法

a. 装置の概要
 Soilmoisture製の1 bar high flow素焼板(model 0675B01M3)を使った携行可能な加圧板法である(写真4)。海外調査では土の持ち帰りが禁止されている場合が多いので現地で水分特性曲線測定する目的でこの装置を作成した。チャンバーは外径30 cm,内径28.4 cmのアクリル円筒を使っており,全体の大きさは直径が34 cm,高さが15 cmそして質量が素焼板を含めて約5.7 kgである。設定された圧力で平衡に達する時間は試料の厚さの二乗に比例する。平衡に達する時間が5.1 cm缶の場合3日かかるとすると,1.5 cm缶では約6時間となる。時間の限られた海外出張では100 cm3採土缶を厚さ1.5 cmに切断して使うことが多かった(1.0 cmでは薄すぎて採土が難しかった)が,100 cm3缶ももちろん使うことが出来る。High flow素焼板は透水性が良好なので,吸引法を介さないで,飽和から-100 kPaまで連続して測定することも可能である。チャンバーと素焼板以外に必要とされる物は,加圧装置(ポンプ),枕の棒(外径が数mmのスチロールパイプなど,何でも良い),圧力計(ハンディマノメータ),排水容器,ピンチコック(アクリルパイプを輪切りにしたリング)である。海外調査では写真4のように,加圧装置として自転車の空気入れと自転車のチューブに付いている金具を加工して用いた。圧縮空気の場合に必要とされる圧力調節器や電動の圧縮ポンプが不要であり大変便利であった。

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b. 測定法
 素焼板をチャンバーにセットする際には,素焼板のゴム底とチャンバーとの癒着を防止するため,写真5のように枕となる3本の棒をトライアングル状に敷く。排水用のチューブ(バイドンゴム管)を素焼板の排出口につける時は,素焼板に付いている真鍮製の排出口の反対側を手で押さえながらつける。(素焼板が割れるのを防ぐため)

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素焼板の飽和は次のようにして行う。素焼板をチャンバーの中に入れると,素焼板を包むゴム板が土手のような役割をするので,脱気水を約400 cm3素焼板の上に注ぐ。ついで,対角線のネジを1対として蝶ナットを順に締める。100 cm程度の圧力をくわえると,素焼板を通して水と空気が出てきてやがて止まる。その後,1000 cmまで圧力を加え,排水が止まったら準備終了である。

試料の飽和は吸引法と同じであり,排水容器の水位を素焼板と同じにしてから試料を素焼板の上に置く(吸引法に比べて試料はゆっくりと毛管飽和することになる)。排水口は必ず排水容器の中に入れておく。試料の表面が水で光るようになったら毛管飽和とみなしてよい。

各圧力段階における平衡時間は試料の厚さによるが,1.5 cmでは12時間を目安にする。また,チャンバーの容積が小さいので,試料からの脱水量が多いときには,水が抜けることにより圧力が下がることに注意する。設定した圧力で平衡になったら,排出口をピンチコックで必ず止め,排気弁を開けてチャンバーを大気圧に戻してから取り出す。厚さの薄い試料の場合は円筒から脱落することがある。このような時はチャンバー全体を傾けると試料が取りやすくなる。

試料の質量を測定後に試料を再び素焼板の上に置き,加圧していく。圧力が前の設定圧力となったら排水口のピンチコックを開け,次の設定圧力まで圧力をかける。圧力の設定は,毛管飽和から-60 cmまでは排水瓶の位置を下げる方法(吸引法)で行なってもよい。-100 cmからは加圧法を使う。一般物理性として水分特性曲線を得る場合には,0, -60, -100, -300, -500, -1000 cmでよい。

チャンバーは透明なので,土によってはカビが生えたり種から芽が出たりするので,平衡に達したら速やかに測定する。カビ等が気になる場合は,黒いビニール袋等でチャンバー全体を覆うと良い。

測定が終了したら,チャンバー内の汚れを雑巾で拭き取る。また,素焼板は水洗いし陰干しする。多量の塩類を試料が含む場合には,0.42 mmを通過した黒ボク土下層土の風乾土をチャンバーの上に撒き,水に溶けた溶質を黒ボク土表面で不溶化させると良い。

最後に,容器に土を詰めた充填土について補足説明をしておく。容器に土を詰めるときは,風乾土のときも湿潤土の時もあるが,砂のような土ではない場合には,吸水によって土の体積が増大することが一般的である。このようなときには円筒の上下面を多孔板で押さえて毛管飽和する。したがって,メンブレンや素焼板上での飽和はできない。

参考
素焼板はナモト貿易株式会社(272-0804 市川市南大野1-44-1)から取り寄せることができる。

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